ATELIER MORIHIKO
COFFEE WORKS | MORIHIKO
aroma

Handmade Coffee
free paper for bit intellectual life MAGNET10 Jannary&February.2005
 
PROFILE : 市川草介 / SOUSUKE ICHIKAWA
焙煎師 / クリエイター / アトリエ・モリヒコ代表 / morihiko193@yahoo.co.jp
東京生まれ。円山の「森彦」代表。釣り、書、CGと多趣味がたたり、COFFEEの焙煎に行きつく。究極のCOFFEEを求めて、ニュークロップ、直火釜、ハンドドリップの世界を若い世代に伝えたく活動開始。プロ向けCOFFEEも開拓中。
PROFILE : 加賀城匡貴 / MASAKI KAGAJO
アイデア(scherzo)
www.scherzosketch.com
笑いをテーマにしたステージ発表〈スケルツォ〉のアイデア。日常の物事を、映像と音楽とともに独特の笑いに変えていく。元・外務官僚や、UKバンドの起用など斬新な演出も。04年は東京、京都公演を成功させた。札幌在住。
PROFILE : 田辺達也 / TATSUYA TANABE
メディアクリエイター / デザイナー
www.t-artworks.com
博物館の情報端末やWEBコンテンツなどの企画開発のかたわら東海大学、札幌大学などでメディアアートの非常勤講師を務める。Sapporo ADCコンペティション2004に出品した作品が金賞・会員審査賞受賞。
PROFILE : 浦本典子 / NORICO URAMOTO
イラストレーター
www.uramoto.org
2002年よりフリーのイラストレーター。グラフィック・デザイナーの夫と、公私ともにパートナーとして活動。自分なりの「かわいい絵」を求めて修行中。夢は猫と暮らすこと。
特集2部 COFFEE TALK
−このサタンの飲み物の何と旨いこと−
夜のトークより朝のトークを!週末のまだ朝の余韻が残る午前9時。開店前のカフェ「森彦」のゆったりとした2階席にオーナーの市川氏と、3人のクリエイターが集まった。市川氏がこの日のために焙煎したコーヒーを飲みながら、コーヒートークが始まる。
■MAGNET:おはようございます。今、午前9時20分頃ですね。週末、早い時間に集まっていただきありがとうございます。そろそろ始めましょうか。さきほど話で出ていたのですが、市川さんはご自分のお店で焙煎しているコーヒーを「ハンドメイドコーヒー」と呼ばれていますね?
●市川:今、「自家用車」なんていってる人いませんよね。だから「自家焙煎」という言葉を使わないで、コーヒーを焙煎しているんだって伝えられたらいいなとずっと考えていて、「ハンドメイドコーヒー」そんな時に閃いた言葉なんです。
■MAGNET:なるほど。では、ひとりひとりに聞いていきましょう。加賀城くんにとって、コーヒーとは?
●加賀城:僕はコーヒーはカフェで飲むことが多い。スケルツォのアイディアを考える時は自宅ではなく、カフェで考えることが多いんです。それを僕は「ひとり会議」と呼んでいるのですが、コーヒーとカフェの空間は僕にとって大切ですね。うまいコーヒーを飲みながら、アイディアを考えるというのは幸福な時間です。
■MAGNET:次に、浦本さんはいかがでしょう。コーヒー好きと聞いていますが。
●浦本:コーヒーは好きで1日3〜4杯は必ず飲みます。自分にとっては、コーヒーはなにかするときの景気づけみたいなもので(笑)。ヤル気を出す時にも飲むし、ゆったりしたい時も飲みますね。
●市川:コーヒーというのはね、覚醒と陶酔の飲み物だからね。起きた時も、寝る前でも楽しめる。しっかり焙煎したものなら眠れなくなるってことはないですよ。

■MAGNET:田辺さんにとってコーヒーとはどうですか?

●田辺:僕にとってコーヒーというのはあたり前の存在なんです。エリック・サティが「家具の音楽」を作曲したでしょう。音楽は家具のようにあたりまえに存在するという発想で、現在のアンビエント・ミュージックのルーツです。コーヒーにも同じものを感じていて、空気のようで、当たり前すぎるところが僕にとって安らぐんです。世の中は一般的に華美なものが目立って、そうじゃないものは注目されないですが、僕にとってコーヒーはあたりまえの存在だけど、気持ち良くて、不可欠なものなんです。
中国の昔話で皇帝が宮廷の画家に「おまえの描きやすいものと、描きにくいものは何か?」と聞いたら、「描きやすいのは『鬼』と答えて、描きにくいものは『犬』でございます」と答えたそうです。前者は、どう描いてもいいものなんですよね。誰もが見たことないものですから。でも、後者は誰でも知っているからこそ、描くのは難しいということなんです。ありきたり、どこにでもあるものこそ、難しいというのはあると思います。シンプルであたり前なコーヒーほど深く難しいものではないでしょうか。


■MAGNET:コーヒーというのはいつごろからあるんですか?

●市川:コーヒーの歴史には諸説があって、発見された当時はそのまま食べたりね。今のようにローストして飲むというのはかなり後じゃないかな。最初は嗜好品というより薬効ですよね。興奮作用があるから薬としての時代があった。ローストして飲む方法が発見されてから、一気に現在のコーヒーのスタイルとして世界中に普及した。コーヒーのルーツといえば「モカ」。世界中のコーヒーの樹は最初の一本がモカ港から出荷されて始まりました。でも、元は同じ苗木でもそれが栽培される土地によって味が変わるのが面白い。その土地の気候を吸収して味が変わるんです。人類とも似ていますよ。同じ人間でも住む地によって骨格や肌の色が違う。
コーヒーが無かったら、今のまわりにあるような文明は無かったろうね。いい意味でも悪い意味でも「近代の夜明け」とコーヒーは強く結びついているんじゃないかな。アダムとイブの神話では林檎が知恵の実だけれど、コーヒーは人類の知性や英知の刺激になくてはならないものだと思いますね。先進国で一番飲まれている飲み物ですからね。それでも、昔は「異教徒の飲み物」として、迫害されていた時代もあるんですよ。色も黒いし、不気味なんだけど飲んでみたらうまい。みんなが夢中になって「このサタンの飲み物のなんとうまいことか!」という感じでね。
●加賀城:普通、色の黒いものは飲む気になれませんよね(笑)


■MAGNET:みなさんにコーヒーについて軽くお聞きしましたが、作る立場として市川さんにとってコーヒーとは?

●市川:僕は自分の作るコーヒーで目指しているのは「ミルクや砂糖をいれなくてもおいしいもの」なんです。そのために焙煎や、抽出に気を使っています。おいしいコーヒーは砂糖をいれなくても甘みがあるんですよ。みなさんご存知ですか?コーヒーを飲む世界の人々の中で、砂糖やミルクを入れないで飲むのを一番好むのは日本人なんですよ。

■MAGNET:それって、日本人の国民性とか文化に関係しているでしょうか?

●市川:当然あると思います。日本人は料理にしても、素材をできるだけ生かし、余計なものを加えず、繊細なものを好みますね。それがコーヒーの飲み方にも関係しているんじゃないかな。本当に国の数だけコーヒーの飲み方はある。ヨーロッパはエスプレッソが基本で、それに砂糖をどっさり入れてよく飲みます。デミタスの小さなカップにスティックの砂糖を2本くらい入れて、底に残った砂糖をかきこんでいくぐらいですから。それはね、カフェインと同時に糖分もとっちまおうということなんです。アメリカはまた違って、アメリカンコーヒーというのは、なぜできたかというと、テキサスのあたりは水がうまくない。だから、コーヒーにしてカブカブ水代わりに飲むために薄くしたんです。浅い焙煎のアメリカンコーヒーにも入れ方があって、ちゃんと入れればとってもおいしいんです。コーヒーというのは、その国の文化や事情によってアレンジして飲まれているというのは、本当におもしろくて、深い。いろいろな入れ方でコーヒーを飲むという事は、同時に世界各国の文化を味わうことです。
●浦本:外国でのコーヒーといえば、私は以前彫刻をやっていたんですけど、イタリアのある彫刻シンポジウムに行ったことがあるんです。ラポラノテルメという小さな町で、現地のオーガーナイザーに「よく来たね。まずコーヒーを飲みなさい」とバーに連れて行かれて。そこでアイスコーヒーを出してくれたんです。喉が乾いていたので、おいしそう〜と思って飲んだら、もう甘くて甘くて日本人はみんなふた口と飲めないんです。ヨウカンを搾ったみたいで(笑)。でも、そこのイタリア人のおじいちゃんとかは普通に飲んでいて、「ウマイだろう?」という感じなんですよ。そのあと、普通のコーヒーをお願いしても出てくるのはデミの小さなカップで(笑)。「もっとゴクゴクのみたいのに〜」という思い出があります。それで、同じコーヒーでも国によって飲み方が違うんだなあって。
●市川:本当にいろいろな飲み方があって、アラブやイスラムでは「塩」を入れて飲むからね。隠し味に塩を加える。それに見合った焙煎法もあって、で、これはこれでコーヒーの別世界だよね。
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