ATELIER MORIHIKO
COFFEE WORKS | MORIHIKO
aroma

Handmade Coffee
■MAGNET:凄く基本的な質問なんですが「浅煎り」と「深煎り」というのは味にどう影響するのですか?
●市川:「浅煎り」のほうが、豆の銘柄の香味が一番出る。「深煎り」はローストの香味が出る。いわゆるロースト臭というやつ。だからローストしすぎると銘柄が違ってもみんな同じ香味になる。 コーヒー好きの人はローストはほどほどでやめますね。
■MAGNET:では、「浅煎り」のほうがいいんですか?
●市川:それがね、そうとも言い切れない。そのあたりは、人間の一生と似ている。豆を煎るとねパチン、パチンとはねます。これを「ハゼ」といって、人間に例えると胎児なんです、飲んでもおもしろくない。酸味すらない。かすかな香りはあるんだけど、まだコーヒーになってない。でも、煎るうちに酸味がガガッと出てくる。それと同時に香ばしさが出てきて、急にコーヒーらしさが出てくる。うまくローストするとこの段階で十分甘いコーヒーができる。さらに煎りを進めると酸味が無くなる。どの段階で「煎り止め」するのかがポイントなんです。人間の人生と似ているというのは、人は歳を重ねていくうちに苦い思いもするよね。歳を重ねるごとに、味が出てくる点が人の一生に似ていると思う。コーヒーの苦い味がわかってくるのも、大人になってからだしね。
●加賀城:僕もね20代中盤くらいかな。コーヒーをブラックで飲むようになったのは。その前はコーヒー牛乳(笑)。苦い味は曲者ですよね。すぐにうまいと思わせない。それからですね「原材料、コーヒー。以上」という宣伝に魅せられたのは(笑)。歳を重ねるごとにうまいコーヒーの味というのがわかってきた気がする。
●田辺:僕は、コーヒーは朝起きて最初の一杯はミルクを入れますね。それが、うまいんです。仕事を始めてからはブラック。コーヒーと人の一生の話がありましたが、コーヒーの産地というのは人間が住んでも過ごしやすいらしいですね。それって、おもしろいなぁ。
●市川:そうコーヒーは天国で作られる(笑)。ケニアのナイロビなんかにいったら帰りたくなくなるよね。そういった場所で第一級のコーヒーが作られる。
●浦本:今回、イラストを描くためにいろいろ調べたんですけど、写真でコーヒーの木や実を初めて見たりして、いろんな発見がありました。コーヒーの実って可愛らしいですけど、食べれないんですか?
●市川:そう美味しそうなんですが食べれないですね。渋いし。僕食べたことありますよ(笑)。
●加賀城:僕は学生の頃、イギリスに住んでいてそこではコーヒーはわりと邪険に扱われていました。ネスカフェとか、日本では見た事のない小さなビンで、 「小ビンのネスカフェ」って初めて見ましたよ(笑)。1〜2杯飲んだら終わりみたいなものですもの。紅茶の国でしたね。
●浦本:以前チェコに行った時には、ラム酒とコーヒーを交互に飲む方がいて、「仕事に疲れた時はこれに限る」と言ってるのを聞いていろいろな飲み方があるんだなぁと思いました。その方は、どんどんラム酒の量が増えていくんですけど(笑)。
●市川:コーヒーの果実酒というのもあるからね。深くローストしたものをつけこむんです。何ヶ月かするとコーヒーの香りのお酒ですよね。それも失敗すると悪酔いするみたい。
●加賀城:コーヒーと水をセットで飲むという楽しみ方もいいですね。舌を一度リセットしてコーヒーを楽しむという。
■MAGNET:今、水の話がでましたが、コーヒーに適した水というのもあるのですか?
●市川:軟水がいいです。ミネラルが少ないものがいい。コーヒーに使ったとき水の中の情報量が少なければ少ないほど豆の情報が入る。ハングリーウォーターといってね。それは軟水なんです。水というのは媒体だよね。入れるものによってコーヒーになったり、紅茶になったり。
●田辺:僕は講師の仕事でメディアアートを教えているのですが、「情報」に対する媒体という部分は「水」はコンピューターやインターネットみたいですね。コーヒーの焙煎機という馴染みのないものですが、どうやって見つけるのですか?
●市川:焙煎機探しというか、選びというのは難しくてね。最初はどこに売ってるかもわからなかった(笑)。その頃、焙煎機も自分で作ろうかなと思ったけど、まだ焙煎のなんたるかも知らずに焙煎機を作ってはマズイだろう(笑)と思って辞めたけど。焙煎の世界は人によっては180度違う意見が通っている世界です。遠火の強火がいい。いや弱火の近火だ。という具合にね。熱源も電気、コークス、薪、ガスなどいろいろある。だけど熱源としては備長炭が一番よい。これはカロリーにムダがない。燃焼時に水を出さないんです。焙煎機というのは、人間の身体と同じで循環器系、運動系、呼吸器系などがちゃんとあるんです。だから、変な焙煎を続けると焙煎機の機械自体も壊れてしまうんです。
●田辺:お米を炊くみたいに火加減とかあるんですか?
●市川:あります。火加減から、蒸らしをとるとか、不要だとか。焙煎をする人の数だけ考えがある。焙煎に近道はないと思います。失敗を重ねることが大事ですね。良くできたときに数値として残して管理しても、常に不確定要素があるから再現は難しい。そもそも豆が生き物だから、まったく再現というのは不可能なんです。その点は出産に似てますね、難産もあるし、安産もある、逆子もある。だからね、一見、単調な作業にみえるんだけど奥が深くて、夢中になれると思う。
焙煎というのはね、機械はなくてもできるんですよ。もし、機会があったら「手網」からトライしてはどうですか?銀杏煎りなんかで使うホウロクを使うんです。熱源はコンロでもできますが、やっぱり備長炭が最高。そして根気よく煎るんです。煙は凄いですよ。エチオピアとかは今でも家庭でフライパンで作ってますよね。
●田辺:みんなで集まってキャンプみたく焙煎して飲むのも楽しそう。
●加賀城:僕はコーヒー一杯で4時間カフェに居たら、注意されたこ
とがあるんだけど、僕にとっては「コーヒー=長居の象徴」なんです。
コーヒーと思考や会話から、面白いアイディアが生まれてくる。牛丼屋ではまとまらない、早過ぎて(笑)。まぁ、注意されたことは注意したお店の人も、4時間居た僕もどっちもどっちですね(笑)。空いてたからいいと思ったのだけど。

●市川:お店側としては居心地の良い場所を提供するのも仕事だから、長居については、特に空いていれば何かいう気にならないね。
●田辺:今、みんなせちがらい世の中ですよね。でも、もっとみんなゆったりした時間をコーヒーと楽しめばいいのに、と思いますよ。
●市川:「森彦」はスローだと思うよ。コーヒーが出てくる時間もね。
■MAGNET:でも、その間がいいと思う。「森彦」はファーストフードじゃないんだから、みんなゆったりとした時間を楽しみに来る訳で、ここでコーヒーがすぐ出てきたりすると調子が狂いますね(笑)。僕はコーヒーが来るまでの時間を楽しむというのも絶対ある。
●浦本:私も週末、街で買物して家に帰る前に「森彦」で休んでいくことが多いです。土日の混んでいる時は運悪く入れないこともあるんですが(笑)。私が一番好きなのは、庭の鳥が見える席なんですけど、これも市川さんのご趣味なんですか?
●市川:そう、野鳥を見ながらコーヒーをゆったり飲めたらどんなにいいだろう、と思って作ったんです。でも、ヒヨドリが結構、餌台の上でケンカとかしててね、あんまりゆったりとした雰囲気じゃないんだけど(笑)。でも、お店は常に自分が幸せだな、という空間作りを心掛けていますよ。窓から葡萄が採れたり、床や柱などもコーヒー色にしたりね。
そういえば、最近、コーヒー豆の宅配も始めたんだけど、そのためにオレンジ色のシトロエン2CV、コーヒーの宅配用に手に入れました。この車には、今の車が失ったものが全てあると思うんだ。排気量は600CCで軽自動車に近いから、当時のエコカーですよ。
僕はあんまり店先には出ないんだよね。その分、コーヒーの味や、お店の作りとかに自分のセンスを反映させたいと思うし、そういった形でお客さんと間接的にコミニュケートしていると思っています。このお店は一人のお客さまが多い。2人でも、そんなにしゃべるという感じではなくてそれぞれが文庫本読んでたりね。無言でいることが少しも苦にならない空間を作りたいですね。
●浦本:年を重ねていってコーヒーの好みが変わっていくというのはありますか?
●市川:若い内は大人のイメージの深煎りに憧れ、齢を重ねると今度は逆に浅煎りのように繊細で微妙なものを理解するようになります。今回はみなさんにマンデリンを飲んでもらいました。みんな日本人だし産地が東洋を代表するのが選んだ理由。違う銘柄を飲んでいたら、きっと対談の内容も変わっていたと思うよ。それだけコーヒーは人間の精神に影響を与えるものだと僕は思う。
■MAGNET:いい感じでまとまりました。今、お昼少し前という感じです。ここで本トークを終わりますね。では、みなさん、良い週末を!
frst